馬場君に初めてインタビューしたのは『もうすぐゴング』

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沖縄は寒い日が続いている。
毎日が曇り時々雨。そろそろ暖かい陽射しが恋しくなってきた。
2月1日からたくさんのプロ野球球団がキャンプインのために沖縄に来ているのに、この天気はちょっとかわいそうだな。
僕がいつもファル娘の散歩に行っているトロピカルビーチのある宜野湾海浜公園内の野球場では、横浜ベイスターズがキャンプに入った。連日報道陣やファンの人たちが、たくさん訪れている。

このキャンプ風景に影響されたわけでもないけど、最近、妻と海浜公園でキャッチボールを始めた。なんか久しぶりに握るボールが懐かしかった。
小学校の頃、僕は野球少年だった。町内のリトルリーグでピッチャーをやっていた。毎日学校が終わると、そのまま校庭で友達と野球。日曜日には朝から、また野球。一年中野球ばかりやっていた。楽しかった。中学に入ってサッカーが楽しくなるまでは、野球一辺倒だった。

馬場君の「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を初めて聴いた時、引き込まれてしまったのは、そんな野球少年だった僕の根っこの部分に触れたからなのだと思う。野球少年だった馬場君と、その話をしたことはないが、いつか酒でも飲みながらおたがいの子供の頃の野球話をしたいと思っている。

先月に続いて、僕が以前書いた馬場君の原稿を紹介したいと思う。
この時のインタビューで、僕は初めて馬場君に会った。
ファーストアルバム『もうすぐゴング』の取材だった。
インタビューの場所は、当時、池尻大橋にあったフォーライフレコードの会議室。
「あ、どーも、馬場俊英です」
ほとんどまだ取材を受けたことがないのだと言った時の、ちょっと緊張気味の表情を思いだす。



●馬場俊英『もうすぐゴング』(Gb '97年2月号掲載)

c0193396_16234193.jpg“歌”を聴きながら、その作り手であるアーティストのことを、あれこれ想像するのが妙に楽しかったりする。元気いっぱいの主人公にアーティスト本人をダブらせてみたり、この歌の主人公は未練タラタラだからもしかして本人もそうなのかもね、とか。当のアーティストにとっては余計なお世話かもしれないけど、僕はよくそんなことを想像してしまう。

 僕が初めて馬場俊英の曲を聴いたのは、彼が佐藤聖子に提供した「Heartbeats Groove」だった。君への僕の愛を確かめたいときはその手の平を僕の胸にあててごらん。ドックンドクンっていう胸のビートは君への愛の証だから…というセンチメンタルな曲を聴きながら、きっとこの人はナイーヴなロマンチストなんだろうなと勝手な想像をしていた。
 そして実際に会った彼は…。そう、表情の端々に見え隠れするナイーヴさと同時に、チャメっけのある少年のような人だった。

「アルバム・タイトルの『もうすぐゴング』のイメージとしては、ガッツ石松さんがボクシングで1ラウンドを闘った後でコーナーに帰ると、そこにはギターが置いてあって、“♪次のラウンドで〜ぇ(と歌う)”って歌うみたいに、ラウンドが終わるごとに1曲ずつ歌っていくというイメージですかねぇ(笑)」
──えっ?(笑) もう少し説明してもらえますかぁ?
「ボクシングに例えるなら、ラウンドの合間にボクサーが自分のコーナーに帰ってきて、汗をふかれたり、水を飲まされたり、肩をもまれたりしながら、いろいろと思いをめぐらせる。次のラウンドで倒せるんじゃないかとか、今日はダメかもしれないとか、とりとめのないことを考えてると、ゴングが鳴って、とりあえずリングの中央に出ていく。それって僕らも同じだと思ったんです。今日が1ラウンドで、明日が2ラウンドだとすれば、ベッドに入る前に今日は楽しかったけど、明日はどうかなっていろいろ思いをめぐらせる。で、次の朝がきて、ゴングは鳴らないけど目覚まし時計が鳴って、また1日が始まり、職場に出ていくのと同じだと思ったんです。僕も、前は昼間バイトをして、夜帰ってから曲を作ることが多かったので、ボクサーでいえばコーナーに戻ってきたときに、そのラウンドで思ったことを歌にしてた感じだったなと思って」
──それで『もうすぐゴング』ですか…。
「最初からそういうコンセプトがちゃんとあってというんじゃないんです。それは後から考えたことなんですけど(笑)」

c0193396_181268.jpg──ファースト・アルバムに収められてる曲は、ずいぶん前に書かれた曲もあるんですか? いちばん古いのは何ラウンドぐらい前?(笑)
「僕はアマチュアの頃、インディーズで何枚か出してて。それから4年半くらい経つんですけど、それ以後のものですね。でもなるべく新しい曲を入れたいと思ってた。デビュー・アルバムは、そのアーティストがやりたい音楽のすべてが含まれてると、よく言いますよね。僕は29歳のデビューだし、最初は29年間に培ってきたすべてが集約されてるものにするべきなんじゃないかと思ったりしたんですけど、いざ作り始めるとそういう気になれなくて。なるべく、現在の自分の視線から眺めたアルバムにしたいと思ったんです。だからこのアルバムを作る前後に作った曲がほとんど」
──「星を待ってる」や「Heartbeats Groove」にしても、「「優しい雨のように」を覚えてますか?」にしても、主人公のナイーヴさにとても惹かれます。
「「優しい雨のように」〜」は、胸の弁で歌を書くというよりは、鏡に映ってる自分を描くといったところがありました。鏡の中の自分に向かって、そういうことがあったっけ?と問いかけるような。100%僕にああいう場面があるかというと、そういうわけでもないんですけどね。ただ、ああいうことを思いながら午後の1時間なりを過ごしてる人がいたら僕は素敵だなぁと思って」

──雨の日のベランダで懐かしいメロディに導かれるように君との想い出が蘇ってくる。男が泣いたっていいだろ? 悲しくなったっていいだろ?と、雨音に重なる懐かしい曲に心揺らぎながら、男はふと思う…という主人公の心情が、メロディとともに届いてくる歌ですね、「「優しい雨のように」〜」は。それに歌の中の風景が見えてくる。
「僕も空気感も含めて風景が見える歌が好きで。僕が歌を作るときも、時間設定とか、まずいろんなポイントを決めてから書くんです。おおまかに、これは朝っぽい歌でいこうとか、夕焼けが見えるとか月が見える時間の歌にしようとか。それにコードでも、これは“Am”っぽいコードの曲を作りたいとか。(笑)作るときの分け方として、僕の中ではわりと時間や景色は大切ですね」
──それに「星を待ってる」では、別れを告げられても、わりと冷静に受けとめて、騒ぎたててないでしょう?(笑) 馬場さん自身も、そういうタイプなんですか?
「そういうところはあるかもしれないですね。時間の経過の中の、どの時点での感情を歌にするかだと思うんです。もう終わりにしたいと言われたときに、そこで素直に引かないのが普通じゃないのか。でも一生騒ぎたて続けることもありえないし、いつかは騒ぎたてない状態になるわけだし。僕は、きっとこの主人公のようにありたいということかもしれないですね」

 181センチの長身。中学時代は野球部で3番サード。で、今はネコが好きという彼は、やっぱり優しい人なんだと思う。
                            text:伊藤博伸

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by mahalohilo | 2010-02-06 16:22 | 馬場俊英 | Trackback | Comments(14)  

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Commented by ナル at 2010-02-06 19:02 x
こんばんは。
マハロさん沖縄も寒いようで、関東も寒く、風も強く我が家のラブとコーギー散歩はつらかったです

馬場さんのインタビュー掲載ありがとうございました
本日はこれから「もうすぐゴング」を聞いてみます。
また違った「もうすぐゴング」になります。
ちょっと悩んでいましたが‘なんとかなるさ’と思えます
お腹の風邪が流行っています。お元気で

ありがとうございました。
Commented by mahalohilo at 2010-02-06 20:15
ナルさん、ありがとう。僕もこのブログを書きながら、あらためて『もうすぐゴング』を聴いてました。いや〜、声が若い!(笑)それにイイ曲たくさん入ってるな〜と思いましたね。特に「One To One」と「優しい雨のように〜」のメロとアレンジはサイコーですねぇ。インタビュー原稿を読んでると、取材の時のことがデジャヴュします。もう13年も前のことなのに、ね。機会があれば、またほかの馬場クンの原稿も読んでもらおうかなぁと思ってます。
Commented by チョコクッキー at 2010-02-07 00:11 x
マハロさん、初めてコメントさせて頂きます。
先日から、ナルさんに紹介されて、頻繁におじゃましていますチョコクッキーと申します。
沖縄寒いんですね、私、宮崎ですが、こちらもキャンプが始まり今日までは割と良いお天気でした。
明日からは下り坂の様です。寒くなるのかな?

さて、馬場さんの記事、楽しく拝見させて頂いています。
ついこの前、『もうすぐゴング』を手に入れて、今、毎日聴いています。
若い馬場さんの声、そしてファーストアルバムから、こんなにステキな曲を書かれていたんだと、驚き、楽しんで聴いています。

マハロさん、まだ私の知らなかった頃の馬場さんのお話、これからも楽しみにしています。
よろしくです。
Commented by mahalohilo at 2010-02-07 10:07
チョコクッキーさん、よーこそ。ナルさんからの繋がりをうれしく思います。これも出逢いですね。またブログに遊びに来てやってください。マハロ〜(ハワイ語で、“感謝、ありがとう”の意味)。
Commented by Pippiママ at 2010-02-07 17:50 x
mahalohiloさん、貴重な馬場さんのインタビューを載せていただいてありがとうございます♪
一文字一文字、、噛みしめるように読みました。
もうすぐゴング、、、今更ながら本当にいい歌ばかりです。

mahalohiloさんの「歌の中に風景が見えてくる」の言葉と
馬場さんの「僕も空気感も含めて風景が見える歌が好き」の言葉。。。
心に残りました。
私も馬場さんの歌でこういうところが好きだから・・・

もうすぐゴングを聴いていると今の馬場さんが作るとびっきり切ないラブソングが聴いてみたいなぁ~~って思ってしまいます。
どんなラブソングになるのかなぁ~~


あっ・・それからいつかぜひ、、馬場さんと少年時代の野球の話をしてくださいね^^♪
Commented by mahalohilo at 2010-02-07 19:54
pippi-mamaさん。風景の見える歌は、デビュー当時から変わらぬ馬場クンの良さですね。彼のココロのアルバムには、きっといろんな風景が写真のファイルのように貼られてるんでしょうね。僕も今の馬場クンが書くとびきり切ないラブソングを聴いてみたいですねぇ。次のアルバムにはそういう歌が入る!?かも。楽しみに待ってましょう!
Commented by 黒猫FUMIJUN at 2010-02-08 10:58 x
mahalohiloさん こんにちは♪

と~っても素敵なお話し 紹介してくださってありがとうございます!
馬場さんとの お二人の様子が浮かんでくるようで、、、。
まだ 私が出会う前の馬場さん。
何年も前のことなのに、つい最近のように鮮やかに浮かんできます。
読んでいて、胸がきゅーっとしました。

なんだか上手く言えないんですが。
このお話しを聞いて、もうすぐゴングが いっそう好きになり、今までと違う響きに聴こえそうです。

本当に素敵なお話し ありがとうございます♪♪♪
馬場さんと野球のお話しできるといいですね!
また おすそわけで 差し支えなかったら教えて下さいね。
私もヘタながら キャッチボール好きです笑。
Commented by mahalohilo at 2010-02-08 12:10
黒猫FUMIJUNさん、ありがとう。このインタビューをあらためて読み直すと、『もうすぐ〜』の歌声と同じように初々しいですねぇ、馬場クンの会話が。ま、そのあたりはイイ意味で、十数年経った今でもあまり変わりませんが(笑)。それも馬場クンの人柄だし、良さだと思います。キャッチボールでは、取り損ねたボールをファル娘がダッシュで持ってきてくれます。けなげな球拾いです(オヤバカ)。
Commented by 村上家 at 2010-02-09 00:22 x
mahalohiloさん、こんばんは~。

キャッチボールって、なんかいいですよね。
本格的な練習とかアップじゃなく、
季節のいいときに、夫婦や親子や友達同士で・・。

わが家も小さな頃から野球浸けの男子が約2名(父・息子です)
キャッチボールは無言の会話のような日常でした。

貴重な馬場さんのインタビュー記事、
本当にありがとうございます!!
話してる馬場さんが鮮明に浮かんで来ます。
以前の「明日はどっちだ」の記事も読ませていただきました。
この頃のGb は買っていたはずなのですが・・・
すみません。忘れてしまってます。

「もうすぐゴング」を初めて聴いたとき、
なんてロマンチックなアルバムなんだろう~と、
まさに、胸がドックンドックンでした^^

欲を言えば、この頃の馬場さんに出会っていたかったですが、
今、当時の馬場さんを思い浮かべながら聴くのも、
とっても幸せなのかもしれませんね。
目覚まし時計がゴングだなんて、馬場さんらしくて微笑ましいです。

では、またお邪魔します。
これからも楽しみにしていますね。










Commented by mahalohilo at 2010-02-09 09:12
村上家さん、今日の沖縄は晴天で暑い! このぶんだと25度にはなりそうです。ベイスターズも今日あたりから本格的に球場での練習に入るんじゃないかな。後で観に行ってみようっと。「目覚まし時計がゴング」って、らしいですね。馬場クンはあの当時から馬場クンなんですよ。また遊びに来てください。新旧の野球少年によろしく!(笑)
Commented by Takako at 2010-02-10 13:33 x
こんにちは。優しい雨の降る中、今日は「もうすぐゴング」を聴きました。
初めてコメントさせて頂きます。
mahalohiloさんの書かれる文章と写真がとても素敵で、「延長戦を続ける大人たちへ」の記事を検索して見つけた夏から、さかのぼってこっそり読ませてもらっていました。読み逃げばっかりですみません。
「もうすぐゴング」の取材記事。馬場さんが照れながらもキラキラした瞳を輝かせながらお話されてる姿が目に浮かんで胸が熱くなりました。
馬場さんは本当に根っこの部分が変わらない方なんですね。
’ナイーヴでロマンティックで茶目っ気たっぷり’な若き日の馬場さんがmahalohiloさんの文章から飛び出して来て、、ほんとうに幸せな時間を過ごせました〜。貴重なお話ありがとうございます!
mahalohiloさんと馬場さんの少年時代の野球談義が実現すること、私も楽しみにしています。
(すみません、、長くなるので続きます)
Commented by Takako at 2010-02-10 13:35 x
(連投ごめんなさい)
沖縄、今日はもうそんな気温なんですね!とっても行きたくなりました。
若い頃、石垣島に2度ほど遊びに行った事があったのですが、長い時間を経て久しぶりに2007年夏に主人と恩納村を中心に、2008年春には馬場さんのライブに参加するために一人で沖縄を訪れました。
特に2008年は一人で観光を兼ねて行ったので、地元の方たちとアチコチで触れ合うことが出来、三線を弾かせてもらったりしてほんとうに思い出深い旅になりました。
なので、mahalohiloさんが書いてくださる沖縄のお話も何だかとても身近に感じられて、いつもとても楽しみです。

GLAYさんと'彼'のお話にも胸がいっぱいになり、そういえば私は今までキチンとGLAYと向き合った事がないなあと思いました。mahalohiloさんの記事を読んでからGLAYのこともとても気になる存在になっています。ほんとうに素敵なお話をたくさんありがとうございます。
(更に続きます。すみません。)
Commented by Takako at 2010-02-10 13:36 x
夕焼けの写真、、素晴らしいですね。癒されました。
でも、、初コメントは緊張しますね。。書きたい事もいっぱいで笑。
また遊びに来させてください。

そうそう。あとひとつだけ(すみません・・)。
弟がブルース・スプリングスティーンが大好きで、、ウチの実家ではいつもブルース・スプリングスティーンが流れていました。弟はスプリングスティーンの影響で、大学生の時、アメリカへギター持って放浪の旅に出ました。私も今でも大好きです。北米バス旅のお話もまたいつか聞かせてくださいね。楽しみにしています。

初めてお邪魔して長文、、失礼しましたm(_ _)m。
Commented by mahalohilo at 2010-02-10 14:51
Dear Takakoさん。コメントありがとう。少し雲は出てますが、今日も沖縄は天気です。現在27度。2008年の馬場クンのライブ@桜坂劇場にも来てたんですね。僕も観に行ってましたよ。実は、その前日に沖縄の情報誌「おきなわJOHO」の取材で、彼と8年ぶりの再会を果たしたんです。8年ぶりに会った馬場クンの第一声は、あの変わらぬ人の良さそうな照れ笑いをしながら…「あー、今日のインタビュアーは伊藤さんと聞いてたんで、楽しみにしてました」…でした。初沖縄ライブも最後は盛り上がってましたよね。またいつでも遊びに来てください。待ってますよ。
あ、それと北米バスの旅、沖縄に引っ越す時に当時の写真がどこかにいっちゃって。見つかり次第、続きを書こうと思ってます。

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