ファジカルは今、大海原に自由の旗をなびかせ、船出する

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彼らのライブを初めて観たのは、今から4年前、〈Okinawa Amp '06〉というイベントだった。
結成後1年も経たずに4000人の観客を前にしたこのステージでの彼らの第一印象は、表面はザラザラ粗いが、内側にピュアな輝きを秘めた原石を思わせるバンドだなということ。
それが、FUZZY Quartet Row(ファジー・カルテット・ロー)。“未熟な4人が漕ぎだす”という意味を名にした沖縄出身の4人バンドだった。

演奏もヴォーカルも未熟だが、青春期の心の揺らぎや葛藤から生まれた歌は、特有のメロディラインを得て、不思議と響いてきたのを思いだす。何かがありそうな予感があった。
沖縄のバンドなのに、沖縄の匂いをまったく感じさせない潔さも、彼らの存在が気になった原因かもしれない。
なぜなら当時の沖縄のバンドは、琉球音階をとり入れたり、三線や太鼓をアレンジに加えることによってアイデンティティを見いだそうとするバンドが多かったからだ。

「むしろ沖縄のバンドと思われるのがいやだった」と、ヴォーカルの新木は言った。
「沖縄のインディーズ・バンドって、上に上がろうとする気持ちから沖縄を強く出そうとする。逆に自分たちは沖縄出身をメリットにしたくはなかった。それをメンバーと話したわけでもないけど、みんな同じことを思っていた。別に出身地は関係なく、音楽で勝負したいと思う気持ちが、FQRの音に表われているんだと思う」


c0193396_18535240.jpg2007年4月にリリースした初のアルバムが『1st』。
メンバーが結集して初めてできた「Right Answer」をはじめ、ギターの眞志喜が作詞する、青の時代の恋愛像をリアルに繊細に描きだした「F-メモリー」「晴れた暁に」などを収めた初々しい作品になっていた。



c0193396_18541145.jpgセカンドアルバム『2nd〜morning calm〜』は、それから2年後の2009年6月にリリースされた。
“朝凪”という意味のサブタイトルがついたこの作品は、メンバー脱退を含めた荒波を乗り越え、静かな海をまた新たな地平を目指して船出した当時の彼らの心境を描ききったアルバムとなった。

「相変わらずノンフィクションな楽曲たちばかりなところは変わらないけど、前よりOKラインの容量が大きくなったと思う。前は、この曲は今までのファジカルの流れだとムリかな!?と頭で考えたりしてたけど、今はどんな曲でも作ってやれ!という意識になった。ふっきれた気がする」(新木)

それまでのファジカルにはなかったハードな「Sister Rock Client」や、「インターセクション」のようなポップな曲も採り入れた柔軟さも見え隠れする内容だった。

c0193396_15504490.jpgそして3日前、5月27日にサードアルバム『3rd-saparate reap-』がリリースされた。

「この3作目は、今後自分たちがやりたい、表現したい世界観を気づかせてくれたアルバムかなと思う」と新木は言う。
「このアルバムではメンバーが演奏で参加してない曲とか、いろんな挑戦的なこともやってて。必ずバンドで作らなければいけないと勝手に自分で縛りを作ってたところがあったけど、今回はその縛りを解いて自由に遊ばせてもらった」

「10月の花嫁」では、ストリングスが新しいファジカルの世界観を提示しているし、「Day lie waste」のようなポップな色も惜しみなく作品化している。ファジカル色に固執せずに、恐れず自由に楽曲の振れ幅を楽しんでいるようにすら聴こえる。

「これは4作目への助走的な作品」という新木。その言葉通り、この新作は、サウンド面での新たな挑戦の先に、バンドの向かう方向性を確信した、次への期待を持たせるアルバムとなった。

昨日(5/29)、この新作『3rd-saparate reap-』のレコ発ライブ@那覇Cyber Boxを観た。
久しぶりに彼らのライブを観たが、確実にバンドアンサンブルが向上している。
かつては新木を頂点に、ほかのメンバーが支えるトライアングル状だったバンド像が、今は各メンバーが同じ地平に立っている印象だ。
各メンバーが演奏面などでそれぞれに個性を出し、自らの立ち位置を意識したうえで、自信をもって自己表現しながら、たがいに引っ張り上げ合っている。それがアンサンブルに繋がり、バンド力がアップした要因なのだと思う。

そこには前作から加入したベースの親川(たーけー)の存在が大きいと僕は思っている。前任のベーシストはポップな演奏もジャジーなものもできる器用なプレイヤーだった。その彼にくらべて、たーけーは決して器用ではない。はっきりいってロックしかできない不器用なベーシストかもしれない。しかし、ロックなマインドにブレがないぶん、信用できる。このバンドにはなくてはならない精神的な支柱になりえるベーシストという気がするのだ。

c0193396_15552417.jpg昨日のライブが、それを証明していた。緊張の色は見え隠れしていたが後半に向かうにつれて、歌も演奏も加速度的によくなっていった。メンバーの表情もリラックスしていく。そのきっかけは、新木がめちゃブリした親川のグダグダのMCからだった(笑)。彼がバンドのムードメーカーになっているように思った。


『3rd』ができたことで、楽曲もよりバラエティにとみ、そのぶんライブも表現に幅ができたこともプラスに作用していた。あえていわせてもらえるなら、3曲目、ファジカルの隠し球的な三拍子の楽曲を、後半に入って演奏したポップな2曲の後に持ってきてほしかった。個人的にはそれだけ。

MCの時に、客席とステージでの仲間っぽいチャラいやりとりがないのもいい。
バンドの存在感もイイ感じにでてきていたし、良いライブだったと思う。



6月15日からは全国ツアーがスタートする。
6/15=福岡、16=北九州、18=東京・新宿、20=仙台、21=千葉・南柏、23=京都、24=名古屋、25=神戸、27=大阪、そして29=東京・渋谷の全10公演。

近くに来た時は、彼らのライブをぜひ観てほしい。
青いながらも、大海原に自由の旗をなびかせ船出しようとする勇姿を、今、観ておいてほしいと思うから。

ファジカルHPは、http://www.fqr.jp

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by mahalohilo | 2010-05-30 16:01 | 沖縄 | Trackback | Comments(2)  

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Commented by インディーズバンド at 2010-07-15 01:03 x
いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
by シャライスタッフ
Commented by mahalohilo at 2010-07-15 09:34
シャライスタッフさん、コメントありがとう。
また遊びにきてください。

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