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毛皮のマリーズの新作『ティン・パン・アレイ』は冒険心あふれる傑作だ

毛皮のマリーズの新作『ティン・パン・アレイ』は冒険心あふれる傑作だ_c0193396_13143243.jpg上京してます。

先月沖縄に戻ってから2週間での再上京です。
ほんの2週間なのに、東京は秋からすっかり冬になっていました。
色づいた木の葉はまだ秋色を残しているけれど、大気の冷たさがまったく違う。ふーっと息をはくと、息雲がはっきり見えるようになった。

仕事がひとくぎりついたので、恒例の多摩川ウォーキングに行ってきた。
昨日のポカポカ陽気から、今日は急に冷えこみがきびくなったのでニット帽に手袋の完全防寒だ。
空からなにやら舞い降りてきた。ん、雨? それとも雪? 確かめるほどでもなく、すぐにやんでいた。
でもこのまま冷えこんだら、雪になるかも!?

毛皮のマリーズの新作『ティン・パン・アレイ』は冒険心あふれる傑作だ_c0193396_1315854.jpg今日のウォーキングBGMは──
空を覆った灰色の雲の感じと身体の芯から冷えてくる寒さに、かつて旅したロンドンやパリを重ねて、「毛皮のマリーズ」のセカンド・アルバム『ティン・パン・アレイ』を選んだ。

毛皮のマリーズは、最近僕が注目しているバンドBest3(ザ・ビートモーターズ、OKAMOTO'S、毛皮のマリーズ)のひとつ。ビートルズやT-REXなどブリティッシュのロックスタンダードのポップ性を消化した音世界と、志磨遼平の耳にひっかかって離れない独特のボーカルに惹かれる。

『ティン・パン・アレイ』は、前作よりもさらに冒険心の疼くままいろんな挑戦を盛り込んだ作品だ。
「序曲(冬の朝)」からアルバムは始まる。ロングトーンの歪んだギターに囁くようなボーカルは、どんよりと曇った空が覆った都会(東京)が朝を迎える絵が浮かんでくる。まさに「序曲」。

一転してポップな「恋するロデオ」へ。タイトルや明るいサウンドとは裏腹に、恋にやぶれたロデオが二人の街を去って行くシーンを描いた歌だ。沈みそうな心をわきたたせるようなトランペットの響きが逆に切ない。ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンが好みそうな(本人がスコアを書きそうな)ブラスアレンジだ。

クラリネットの旋律が物憂さ漂う「さよならベイビー・ブルー」では港町の汐の匂いを感じ、アルバム中最強ポップメロのシングル曲「Mary Lou」では幼いが故に許されない愛から解き放とうとする二人が歌われる。〈夢のような甘い口づけを大人は知らない…大人になればすべて許されるんだ…だからどこか遠くへ行こう〉

毛皮のマリーズの新作『ティン・パン・アレイ』は冒険心あふれる傑作だ_c0193396_13234034.jpgスペクターサウンドが軽快な(できればフィル・スペクターがアレンジに使うカスタネットを入れてほしかった!)「C列車でいこう」。個人的に、子供の頃からC列車(JR中央線)を使っている僕としては、しごく身近で親しみやすい歌だ。

フィリー(フィラデルフィア)ソウルのやわらかい音感が心地よいラブソング「おおハレルヤ」。ブラスのアレンジも、Rhodesの音色も、志磨の歌い方やフェイクも実にフィリーしていてイイ。

毛皮のマリーズの新作『ティン・パン・アレイ』は冒険心あふれる傑作だ_c0193396_132419.jpg愛することの素晴らしさをストレートに歌う「愛のテーマ」、それに続く「欲望」ともに弦楽器がさらに広がりと奥行きを与えている。

そしてクァルテットとピアノと12弦アコギによる「弦楽四重奏第9番ホ長調「東京」」で、アルバムは終わりを迎える。

東京の冬の朝から始まり、暮れゆく東京の夜の風景で幕を閉じる。その間には恋にやぶれた心を抱きながら、春の訪れを心待ちしていた主人公が、大切な人と出逢い、〈愛してるよ 君だけを そう 世界が終わるまで〉と思えるようになるまでの愛のストーリーが描かれている。

ビートルズに例えるなら、毛皮のマリーズにとっての『Sgt.Peppers』、それがこの新作だと思う。

毛皮のマリーズの『ティン・パン・アレイ』は、2011年1月19日にリリースされる。

by mahalohilo | 2010-12-16 13:28 | music | Trackback | Comments(0)  

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